アフガニスタンの文化
アフガニスタンの娯楽事情
私は2005年5月から2007年5月までNGOの職員としてアフガニスタン(以下アフガン)で働いていました。日本にいるとアフガンの情報はケシ栽培や自爆テロのことだけしか耳にしません。しかし、あたりまえですがアフガンにも市井の生活があります。そこで現地の娯楽事情をいくつか紹介してみたいと思います。
クロスアーツ会員 河村 護
アフガンのメディア
都市部には多くの家の屋根にテレビのアンテナを見ることができます。日本で売っているような立派なパラボラアンテナからジュースの空き缶を平らにして何枚も重ねて作られている手作りパラボラアンテナや針金を丸めて網のない虫取り網のような形をしている安いアンテナまで多彩です。
一方、農村部では電気もないためテレビなんてないだろう、と考えるのは早計です。なんと、多くの村で最低一軒は小型発電機と立派なテレビセットを所有しているのです。
戦後間もない日本のようにテレビのある一軒の家に近隣が集まり野球やプロレスを観戦していたことと近い状況が想像されます。
テレビが割と普及しているためか、ラジオの方はあまり目立ちません。新聞に至っては首都カブール以外はほとんど存在していないようです。アフガン第二の都市マザリシャリフでさえ、風刺新聞が一紙存在するだけでした。
主要都市ではインターネットカフェが続々とオープンしているようです。アフガンの主要言語(ダリ語)はペルシャ語に近いため、ペルシャ語系のサイトから最新の情報を仕入れている姿を見かけます。
映画館は首都カブールに一軒だけあります。かつては各都市に映画館があったようですが、前政権時代に閉鎖に追い込まれたため、今は集会所や空き家になってしまっているとのことです。私が暮らしていた小さな田舎町では映画館が悲しいことにジムになっていました。
アフガンのテレビ番組
娯楽が限られているため電気が許す限りテレビは各家庭で大活躍です。現在アフガンでは7、8局ほどのテレビ局が存在するようです。それらの局が放送する 1.映画、 2.音楽、 3.コメディのトレンドを少し紹介しましょう。
映画・ドラマ
アフガンのテレビ番組は「インドモノ」に席巻されているといっても過言ではないでしょう。特にインドドラマは絶大な人気を誇っています。どのドラマもストーリーはたいてい「美人で幸薄いヒロインと意地悪なお金持ち女が一人の王子様をめぐって争う」という単純(!?)なものです。見ている人は誰でも先の展開を予想できるようですが、それでも欠かさず毎日(!)見ています。
アフガン唯一の映画館で上映されている映画はすべてインド映画でした。よってテレビでもインド映画は大人気です。しかし、村で会った子どもに「あなたはジャッキー・チェン?」と聞かれたことがあるので他の映画も徐々に浸透してきているのかもしれません。5年ほど前には街中いたるところで「タイタニック」のTシャツを着ている人が見られた、との情報もあります。
音楽
ここでもインド音楽が圧倒的な支持を得ています。しかし、かつてはアフガンにも有名な歌手や詩人が多数存在していたのでたまに彼らの歌をカバーして(?)アフガンソングを歌っている様子を映す番組もあります。また、プロの歌手ばかりでなくアフガン版「スター誕生」のような番組もあります。
ちなみに私がいた田舎町ではウズベク人が多く住んでいたため、ウズベキスタン系の歌番組も好まれていたようです。そのような民族の違いが見られるのもアフガンならではのことでしょう。
コメディ
この分野はアイディアひとつでお金をかけずに作ることができるためアフガン独自の番組が多数存在しているようです。しかし絶大な人気を誇る番組はそれほどありません。私個人の考えですが、今のアフガン人には「笑い」こそが必要だと思っています。ですので、コメディ番組の今後の発展を祈るばかりです。
他にもニュースや政治討論番組、料理番組のようなアフガン人によって作られている番組も見られるようになりました。
アフガンの人気スポーツ
町はずれの空き地では若者たちがサッカーやバレーボールに興じている姿を見かけます。しかし、ボディービルもかつては盛んだったらしく、大きな町にはいくつもマッチョ姿の人間が描かれている看板を見かけます。もちろんそこはジムでこの私もしばらく通っていた時期がありました。
アフガン人はなぜか上半身だけをひたすら鍛えます。服を着ていると小顔の小さな若者が実はへそから首までだけがシルベスター・スタローンなのです!なぜかみんな下半身の強化には興味がないようでひたすらベンチプレスや鉄アレイを振り続けています。その姿は究極の逆三角形!私がスクワットをやっていたら「お前はいったい何をしているのだ?」と多くの人に聞かれたものです。
あまり知られていないアフガン人の素顔。みなさんもこのクロスアーツを通じてもう少し知ってみませんか?